2014年5月18日日曜日

率直な感想 前編 @エイリアン博物館






現在、志摩市歴史民俗資料館で「石山浩達展 エイリアン博物館」が開催中です。予想以上に様々な「面白いこと」がこの展覧会で起きているので、その率直な感想を書きます。

かなりの長文になると思うので、下記の二部構成のブログにします。

<前編> エイリアン博物館についての解説
<後編> お客さんとのスリリングな質疑応答の様子/本展の特異な点/自分の率直な感想





<前編 エイリアン博物館についての解説>

作家としての手の内の一部を明かすような記述になりますが、今回はなるべく詳細に解説してみようと思います。

この展覧会は、宇宙人「つのぴー」をはじめ様々なエイリアンたちが陳列ケースに並んだ異色の内容です。会場には「つのぴー1号」〜「つのぴー100号」、さらに「つのたろう7号」や「ゆーほーん0号」といった様々な宇宙人が60体くらい登場しています。
作品の形態は、絵画や立体、漫画、インスタレーションなど様々です。

作品のメインコンセプトは、"Alien Vision"(46億年前から地球を見続けるエイリアンには、人間の姿がどのように見えているのか?)です。
絵画(エイリアンが見た地球と人間の姿)+立体(エイリアン)+漫画(エイリアンと宇宙の物語)で構成される"Alien Vision"の世界観はあまりにも壮大で、その物語と世界観は日々拡張され続けています。"Alien Vision"の全てを一つの展覧会で見せることは到底できないため、いつも展覧会ごとに"Alien Vision"のどこに焦点をあてるのかテーマを決めるようにしています。

本展のテーマは、「エイリアンの生態と死」です。これまで以上にエイリアンそのものにスポットがあたり物語が展開される点が大きな特徴です。





「エイリアン博物館」は、新作11点、旧作数十点、個人のコレクション4点で構成されています。今回はふだん現代アートとは無縁の一般の来場者が大半になるため、鑑賞の敷居を下げる狙いで作品の詳細な解説文を会場に設置しました。作品鑑賞とあわせて解説文や漫画を読むと、新旧織り交ぜた絵画、立体、漫画(2008年〜最新作まで)が複雑に絡み合う世界観の全貌が次第に見えてくる会場構成になっています。

もちろん「解説文は面倒くさい。読む気にならない。」という方もいると思います。展覧会にもよりますが、僕もキャプションの解説部分を読まずに鑑賞することが多いです。当然、鑑賞の仕方なんて十人十色、無限にあっていいと思います。本展では、そんな「面倒くさい」という方やそもそも「現代アートがわからない」という方にも、作品の造形のみを純粋に味わって興奮できるような作品をセレクトしています。

また、"Alien Vision"の展覧会をいつも見に来てくださる方々や、いわゆる玄人の方々にも心を揺さぶっていただけるよう、「エイリアンの死」というこれまでの物語から地続きであり尚且つ新たな展開をつくり、作品を読み込むほどエイリアンの様々な謎や作品世界の核心に迫っていけるように構成しました。

そのため、この展覧会に順路はありません。



ではここからは、具体的な作品について解説します。


【scean1】


4種類のエイリアンが存在し、それぞれ「つのぴー」「つのたろう」「ゆーほーん」「がんがん」という名前があります。各個体には◯◯号という番号が付いていて、画家、飛行家、写真家、宇宙温泉経営者、スケーターなど様々なエイリアンがいます。最も数の多い画家のエイリアンたちは、自身が見た地球と人間の姿を油絵具で描くことで対象を認識します。
全てのエイリアンには年齢、生息地、性格、職業など細かい設定があり、本展ではその一部を解説文で紹介しています。
(立体の素材は、FRPや石粉粘土で成形し、トヨタ自動車のホワイトパールで塗装。さらに、油絵具で彩色しています。技法名:日本色タブロー)


※各作品の解説は本展のキャプションの原文のまま記載します。



つのぴー11号
年齢:149,198,234,123,487,808,147歳
生息地:アンドロメダ銀河
好きな色:カドミウムレッド
皮膚の色:ホワイトパールクリスタルシャイン

凛々しい顔立ちと右手の赤い手袋がトレードマークのつのぴー。
ユーモアのある性格を持つ。つのぴー7号とは腐れ縁だが、
主な活動領域は異なりアンドロメダ銀河で生息している。




つのぴー49号
年齢:149,197,127,006,986,619,967歳
生息地:アンドロメダ銀河
好きな色:ピーチブラック
皮膚の色:ホワイトパールクリスタルシャイン

つのぴーの中ではやや口が悪く反骨精神が強い。"海水パンツ"
と呼ばれる人間たちの存在に注目し、観察を続けている。




ゆーほーん0号

ビッグバン以前、7垓3千京年以上前から生き続ける最古のゆーほーん。
変容を続けるその体には様々な姿の千手観音菩薩が映し出されている。
(2011年 スタイロフォーム+シルバー塗装、白亜地、油彩
他にも「つのぴー0号」などエイリアンの0号はみんなシルバーの皮膚を持つ。)



プラットホーム:ちきゅー

宇宙の停車駅の一つ「ちきゅー」。宇宙を旅する様々なエイリアン
たちが行き交う場所だが希に特別な力を持つ人間が現れることがある。
(2013年 FRP+ホワイトパール塗装、油彩)



Earth Boy

地球を体の一部に宿した少年。人間には普通の子どもにしか
見えず、エイリアンのみがその真実の姿を知っている。
(絵画の素材は、古典技法=板+白亜地+油彩を使用。描画は筆描き。)




Earth Girl

地球を体の一部に宿した少女。人間には普通の子どもにしか
見えず、エイリアンのみがその真実の姿を知っている。
(2013年 板、白亜地、油彩)



海水パンツ(?)

至る所に姿を現す海水パンツのヤツラ。
大人でも子どもでもなく、その存在はエイリアンにとっても不可解。



また、最近始めたブログ「宇宙人 つのぴー」では「つのぴー1号」から順番にそれぞれの生息地や性格などマニアックな情報が紹介されています。この展覧会と連動した内容になっていて、少しずつ更新中です。ブログを見つつ、この展示を楽しむお客さんも多数います。
ブログ「宇宙人 つのぴー」http://ameblo.jp/tsunopie/



Lightning

宇宙からエイリアンが見た地球と人間の子どもの姿。
子どもは眼から強烈な"光"を放っているように見える。
(2010年 キャンバス、白亜地、油彩 227.3×181.8cm 大学の卒業制作。17歳で訪れたラスベガスのカジノやコーラの店、海賊のショーの爆炎、19歳のヨーロッパの旅で訪れたガウディの建築、スペインの市場、ユダヤ博物館の窓、さらに銀河や惑星、人工衛星、宇宙飛行士などから発せられる様々な"光"、そして2千個以上のキューブ=エイリアンの墓標などが4点透視図法で濃密に描かれている。実は自画像でもある。)



【scean2】

永遠の個

エイリアンが見た時空世界。人間の叡智、希望、欲望、美意識によって生み出されてきた「個」である車は、エイリアンの墓標=キューブと共に、宇宙の時空に刻まれている。
(2009年 板、白亜地、油彩で制作した初期作品。CGやエアブラシは使わず全て絵筆で描画している。約2千個ある立方体は、4点透視図法で描いている。消失点は遠方、左右、下方の4点。162.1×162.1cm)



Cube

宇宙の歴史(137億年)よりはるかに長い寿命を持つエイリアン
たちにもやがては死が訪れる。エイリアンの化石は長い年月を経て
キューブの墓標に包み込まれ、宇宙と一体になる。
(2008年 紙 アクリル 17×18cm 今回の出品作の中で最も古い。)



つのぴー100号

エイリアン(宇宙人)「つのぴー」の100号。
主におとめ座超銀河団で生息している。「つのぴー」の中でも特に長いツノを持っている。宇宙の様々な現象「いかづち」「ちょうしんせいばくはつ」「ほしのたんじょう」などに関わる神秘的な力を持つと言われている。
宇宙空間で墓標の川に遭遇し、埋葬された仲間たちを見送る。




【scean3】

この展覧会の最も重要なセクションで、会場中央の陳列ケースに配されています。最新作の「エイリアンの化石」や「エイリアンの墓標」が展示され、これまで謎に包まれていた「エイリアンの死」の片鱗に迫る内容になっています。


エイリアンの化石:572,309,715,628,007,351,428年前

エイリアン(宇宙人)「つのぴー0号」の化石。長い間、宇宙を
漂い続けていたが、つのぴー80号たちにより発見される。
(2014年 フレスコ画 本展のためにフレスコで制作された最新作。油絵具、テンペラ、アクリルなどと異なり接着剤<油、卵、アラビアゴムなど>を用いず、水で溶いただけの顔料で描画され、数千年規模の保存が可能。例:ミケランジェロ「最後の審判」等)



エイリアンの墓標

「つのぴー0号」の化石が長い年月を経て埋葬されていく。化石を包み込むキューブはエイリアンの墓標となり、時空世界に刻まれる。
(2014年 板、紙、ペン、色鉛筆
絵具至上主義の美術界において過小評価されている「色鉛筆」
でタブローを描く、という裏のコンセプトも含まれた作品。)



【scean4】

エイリアンたちの日常が表現された一区画。ここにはあえて解説文は置かずに造形のみから想像が膨らむようにしています。



【scean5】

"脱力系"の絵画と"Alien Vision"の漫画のセクションです。



「Alien Vision 書き下ろし漫画シリーズ 1P - 17P」(コピー)
2013年1月〜継続中
※14P - 17Pは下書きで、本展の内容にあわせて新たに描いたもの

エイリアンの視点で描かれた漫画。物語は、宇宙で4体のエイリアンが地球誕生を見ている場面から始まり、生命誕生、アノマロカリスの繁栄、人類誕生、ヴィレンドルフのヴィーナスの創造、関ヶ原の闘い、ガウディのサグラダファミリア建造、核爆弾投下、そして現在へと展開していく。展覧会ごとに物語は少しずつ更新され、様々な謎が明らかになっていく。現在13Pまで完成。
本展では、現在制作された全ページのコピーと原画の一部を展示。14P以降の下書きを先行公開している。
(漫画の支持体は、ホワイトパールで塗装された車のボンネットやアクリル板。その上に全て油絵具の黒で絵筆で描かれている。下書きと書き直しができないため、常に一発描きになる。)



「Alien Vision 書き下ろし漫画シリーズ 13P」<原画>



 「Alien Vision 書き下ろし漫画シリーズ 14P」<下書き>



「Alien Vision 書き下ろし漫画シリーズ 15P」<下書き>



 「Alien Vision 書き下ろし漫画シリーズ 16P」<下書き>



「Alien Vision 書き下ろし漫画シリーズ 17P」<下書き>



紫の星

宇宙からエイリアンが見た地球と人間の大人たちの姿。彼らは惑星に横たわり力が抜けてしまっているようにも見えるため、エイリアンたちは"脱力系"と呼んでいる。
(2010年 キャンバス、油彩 145.5×145.5cm 絵具を垂らしたり、滲ませたり、偶然性を用いた技法で描かれている。"光"の絵画とはあらゆる点で対極にある作品。)



あいまいなスタジアム壱

宇宙からエイリアンが見た地球と人間の大人たちの姿。
サッカーのスタジアムで選手も観客も審判も脱力している。
(2011年 キャンバス、油彩 91×116.7cm)



【scean6】

展覧会場の入場口付近です。陳列ケースに入った「アースボーイ」の立体と「つのぴー」が出迎えてくれます。



Alien Vision 9:Earth Boy:千年スーツ

エイリアンが見た地球を体の一部に宿した少年"Earth Boy"。千年の寿命を得ることができる"千年スーツ"を着用しており、全身が油絵具でできている。
(2014年 FRP、日本色タブロー、Paint × Sculpt、ガンコラ=ガンプラのコラージュ、Oil Sculpture 他 123×46×43cm)



【scean7】


会場の片隅に配置されたケースには、小さなハイハイつのぴーと鉱物が1点置かれています。


Cube

地球(スペイン)で実際に発見された天然の結晶。人が手を加えたのではなく、自然とキューブ型で出てくるという。ネットで偶然発見し購入したもの。そこに油絵具で"海水パンツ"を描いた。空想・妄想から生まれたエイリアンの墓標と同形のものが地球で発掘されている事実に興味を惹かれ、つのぴーと共にケースの中に配置している。





解説は以上です。

通常の個展では、基本的にすべて新作を展示・販売しています。一つの展示に向けて、3ヶ月〜1年くらいの短期的な期間に集中的につくったものでインスタレーションすることになります。一方、今回は6年前〜最新作までの新・旧作を織り交ぜて一つの空間をつくりだしたことで、短期間で制作したある種偏りのある作品群では生み出せない深みと広がりのある展覧会になったと思います。


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後編は後日またアップします。
この展覧会で実際に起きたこと、お客さんとの質疑応答の様子、自分の感想などを書いていきます。







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