Alien Vision:unlimited oil
"Alien Vision:unlimited oil " 2013 500×500×500cm Installation view : Taro Okamoto Museum of Art, Kawasaki © ISHIYAMA Hiromichi Photo : Matsubara Yutaka |
絵画と立体、漫画などを融合し、100以上のパーツにより構成された大型の総合芸術作品を川崎市岡本太郎美術館で展示しました。
この作品は全体で1体の巨大なエイリアンを表現していて、核を成す3つのメインパーツがあります。
「ALIEN VISION 1 ー真砂なす数なき星の其の中に我に向ひて光る星ありー」 (正岡子規より) 2010-2011 板 白亜地 油彩 H190×W400cm © ISHIYAMA Hiromichi Photo:Matsubara Yutaka |
「エイリアンには地球と人間の姿がこのように見えている」というコンセプトで全ての作品は生み出されています。エイリアンは自身が見た地球と人間の姿を、自らの体に「油絵具」で描き出すことで対象を認識・理解します。
「ALIEN VISION 1ー・・・」では、エイリアンの巨大な翼の片側に、エイリアンが見た地球の子どもが描かれています。エイリアンの眼には、人間の子どもは、宇宙を背に、眼から強烈な何か(光?ビーム?エネルギー?)を放っているように見えており、彼らは子どもを”光”=Lightと呼んでいます。
エイリアンは、そんな子どもの姿をとらえ描くために、絵画の古典技法を選択。絵画の組成を地層と同じく層としてとらえ、支持体(板)→膠引き(二層)→白亜地(十層)→描画→ニスと全ての行程に膨大な手間をかけて一から手作りで制作することで、通常の絵画を凌駕する美しい絵具の発色や、筆致の無いツルツルの絵肌、艶、高い耐久性・保存性を実現させています。
「ALIEN VISION 2 ー太陽の下に新しきことなしとは古人の道破した言葉である。 しかし新しいことのないのは独り太陽の下ばかりではない。ー」 (芥川龍之介「星」より) 2011 キャンバス 油彩 H130.3×W422.7cm © ISHIYAMA Hiromichi Photo:Matsubara Yutaka |
「ALIEN VISION 2ー・・・」では、エイリアンのもう片方の巨大な翼に、彼らが見た地球の大人たちが描かれています。大人たちは横たわり(寝ている?死んでいる?遊んでいる?脱力している?)力が抜けてしまっているようにも見えます。
エイリアンは、大人たちを”脱力系”=Darknessと名付けました。
エイリアンは、キャンバスの目に油絵具を垂らしたり、滲ませたりといった偶然性を用いることで、大人たちをとらえ描き出しています。
「ALIEN VISION 3 ー鳥よ‥‥おまえはどこから来た?なぜわしを そう見つめる?ー」(手塚治虫「火の鳥」より) 2012 FRP、トヨタのホワイトパール塗装、白亜地、油彩、 ガンコラ=ガンプラのコラージュ、日産スカイラインのテールランプ、 アクリルドーム、他 500×205×205cm © ISHIYAMA Hiromichi Photo:Matsubara Yutaka |
「ALIEN VISION 3ー・・・」は、別名を「ゆーほーん1号」と呼ばれ、宇宙空間でエイリアンたちを運ぶ巨大な母船のようなエイリアンです。自らの体に地球や人間の様々なヴィジョン(”光”、”脱力系”、”黒目”、”海水パンツ”など)を映し出し、また、自身の体も見るものに応じて”変容”=Metamorphoseを繰り返しています。
体の表面を自動車のホワイトパール塗装でコーティングし、さらに絵画の古典技法「白亜地+油彩」により”光”を描き込んだり、絵具を盛り上げて彫刻の素材として用いたり、漫画を描いたり、ガンコラ=ガンプラのコラージュを画材として用いたりしています。
長く伸びるツノの先にはキノコ型のアンテナがついています。
内部には4体のエイリアン、「つのぴー14号」と「ゆーほーん2号」、「つのたろう4号」、「がんがん7号」が乗り込み地球を眺めています。
漫画も全て油絵具の筆描きで描かれています。下書きはなしの一発勝負です。
ホワイトパール塗装のボディの中に、スカイラインのテールランプも内蔵。
"つのぴー1号〜51号 " 2013 Installation view : Taro Okamoto Museum of Art, Kawasaki © ISHIYAMA Hiromichi Photo:Matsubara Yutaka |
「つのぴー1号」〜「つのぴー51号」や「Alien creature」、「Oiled mushroom」などたくさんのエイリアンたちがいます。
「ALIEN VISION 5:Metamorphose」 2012 スタイロフォーム 白亜地 油彩 ウレタン塗料 他 H163×W100×D90㎝ © ISHIYAMA Hiromichi Photo:Matsubara Yutaka |
「ALIEN VISION 0:核心」 2011 スタイロフォーム 白亜地 油彩 ウレタン塗料 他 H57×W51×D58㎝ © ISHIYAMA Hiromichi Photo:Matsubara Yutaka |
「Alien ship:M12001」 2012 スタイロフォーム 石粉粘土 油彩 ウレタン塗料 他 © ISHIYAMA Hiromichi Photo:Matsubara Yutaka |
「Alien wing:M12018」 2012 FRP スタイロフォーム ウレタン塗料 油彩 H226×W500×D500㎝ © ISHIYAMA Hiromichi Photo:Matsubara Yutaka |
「ALIEN VISION 6:Manga」 2013 自動車のボンネット トヨタのホワイトパール塗装 油彩 © ISHIYAMA Hiromichi Photo:Matsubara Yutaka |
4体のエイリアンを軸に"ALIEN VISION"のストーリーが漫画で展開されています。
物語は、ある超銀河団にて4体のエイリアンが地球誕生を見ている場面から始まり、生命誕生、先カンブリア紀のアノマロカリスの繁栄、人類誕生、ヴィレンドルフのヴィーナスの創造、関ヶ原の闘い、ガウディのサグラダ・ファミリア建造、核爆弾投下、そして現在へと展開していきます。
ホワイトパール塗装されたボンネットの上に油絵具の筆描きで描かれた漫画は、現在10ページあり今後もその続きが描かれていきます。この漫画を読むことで、"ALIEN VISION"の作品一つひとつの意味が次第に見えてくる構成になっています。
「Oil sculpture:M12016」 2012 FRP 油彩 他 © ISHIYAMA Hiromichi Photo:Matsubara Yutaka |
油絵具を塊として用いることで、油絵具の彫刻「Oil sculpture」をつくっています。
この「Oil sculpture」シリーズの作品は、2012年5月にスパイラルで開催された「SICF13」ですでに発表していますが、今回はツノタイプとリンゴタイプのものをつくりました。
「Oil sculpture:M12015」 2012 油彩 他 © ISHIYAMA Hiromichi Photo:Matsubara Yutaka |
「がんがん1号」 2012 FRP ホワイトパール塗装 板 白亜地 油彩 ガンコラ=ガンプラのコラージュ アクリルドーム 他 © ISHIYAMA Hiromichi Photo:Matsubara Yutaka |
「Earth 1」 2012 © ISHIYAMA Hiromichi Photo : Matsubara Yutaka |
"Alien Vision:unlimited oil " 2013 500×500×500cm Installation view : Taro Okamoto Museum of Art, Kawasaki © ISHIYAMA Hiromichi Photo : Matsubara Yutaka |
「第16回岡本太郎現代芸術賞」で「Alien Vision:unlimited oil」を展示したことで、ようやく"ALIEN VISION"の全体像を一つの形として発表することができました。
"ALIEN VISION"の第1弾が2ヶ月間の会期と共に終了しました。しかし、まだまだ始まったばかり。漫画の最後に出てくる「つのぴー49号」が語る”光”でも”脱力系”でも”黒目”でもない”海水パンツ”の人間たちは何者なのか?今後のエイリアンたちの動向は?・・・など今後も"ALIEN VISION"は予測不能な展開をしていきます。
Taro Okamoto Museum of Art, Kawasaki Photo : Matsubara Yutaka |