台風と絵



Electrric Light ©ISHIYAMA Hiromichi




先週から、7つ分の絵の下準備を並行して進めています。

パネル制作、膠引き、白亜地の地塗り、研磨の行程をそれぞれ時間差をつくって進める、という混み入った作業が続いています。塗料の配合や温度調節、作業工程の時間差のことなど、頭の中で複雑な計算を繰り返しながら、丁寧に作業を進めていきます。

永遠に朽ちないタブローはなくとも、乱雑に絵を描く行為は、作品の「物質としての強度」を自ら進んで落とす行為であり、納得がいきません。

白亜地は中世の絵画(テンペラ)の頃から用いられていた古典的な地塗りです。白亜地や石膏地といった吸収性の地に適切な手順で描かれた絵画は、市販のキャンバスに描いた場合に比べて遥かに高い保存性を持ちます。それは現在も美しい画面を保った15世紀の絵画が証明しています。このような絵を描く前の下準備は、絵画組成を堅牢なものにするためには絶対に手を抜けないところです。

今日は久々に雨があがったので、外で大作2点の地塗り面の研磨作業を数時間かけて一気にしました。研磨中は台風の風に煽られて、削られた白い粉は一瞬にして吹き飛ばされていきました。

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