ヨーロッパ40日の旅 2 ドイツーカッセル
●カッセル(2007年8月22日、23日)
8月22日。
ベルリンで出会いビールを飲み交わしたオオスギさんと中央駅でお別れをして、ICE(超特急)でカッセルへ移動しました。目的は5年に1度開催される現代美術の国際展、ドクメンタ12を見ることです。古代彫刻や古典絵画に触れたベルリンとは一転し、世界の現代美術を巡ります。
ドクメンタはカッセルを舞台に複数の場所で行われています。僕は今回、4つの会場を訪れました。
最初に向かったのは、メイン会場であるフリデリツィアヌムです。
ドクメンタ12のディレクターはロゲール・ビュルゲルです。
「我々にとって近代は古典か」「グローバリゼーションの中での剥き出しの生とは何か」「美術の教育において我々は何をなすべきか」という3つのテーマを掲げ、世界各国のアーティストが14世紀から2007年までに生み出した作品が並びます。
Trisha Brown(トリッシャ・ブラウン)のFloor of the Forestというインスタレーション+パフォーマンスの作品。あらかじめ組まれた網状のセットを駆使して、ダンサーたちによる奇妙なパフォーマンスが繰り広げられます。
戦車のようにも見える物体。
建物を突き抜けて外までも続いている力強い作品。鑑賞者を飲み込む典型的な空間芸術です。
Juan Davilaの油彩とコラージュによる作品。メッセージ性が強い分、説明的な要素が気になります。
続いて2つ目の会場、ドクメンタホールへ。
ドクメンタでは同じ作家の作品がそれぞれ複数の会場で展示されています。作家たちによるオリジナリティーある「表現スタイル」のPRがひたすら続きます。そのため、それらを繰り返し見ていくと、次第に作家を覚え、目が慣れてきて、お気に入りができ、まるでショッピングをしているかのような感覚になっていきます。このような反復を用いた展示形態は、近年とても多いように感じます。
3つ目の会場はNeue Galerie(新絵画館)です。
映像作品も豊富でした。
ろうそくを用いた作品。
顔。
移動中に見かけた城、オランジェリー。
そして、4つ目はビニールハウスのような外観のAue-Pavillion。
作品に取り込まれた人々の姿が見えます。
DREAMとペイントされた舟。
時間差で個々の弦が鳴り響きます。
フィルターなしで素直に鑑賞、体験してまわったドクメンタでしたが、全体を通して心を動かす作品があまり無かったというのが正直な感想です。奇をてらった表現にはかえって既視感があり、また意外性のある作品に対して驚きや不快感をもったとしても、きわめて微弱なものでした。「何かを感じさせる」ことがアートの目的・魅力と仮定するならば、驚きや不快感もありかもしれませんが、僕はそれでは満足できない。コンセプト至上主義に傾斜する今の時代だからこそ、僕は絵画による普遍的な造形の可能性を追求しています。
駐車場に発見。日本とはレベルの違うラクガキです。
ホテル、メーヴェンピックに宿泊しました。
8月23日。
ドクメンタで賑わうカッセルですが、この街はメルヘン街道に位置しグリム兄弟が長く暮らしたことでも知られています。
カッセル2日目はグリム兄弟博物館を訪れ、ドイツ文学の原型とも評されるグリム童話の世界を堪能してきました。
童話の原稿や本が揃っています。
子どもの頃、夢見た空想の世界を思い出しました。例えば宗教画は重く深く突き刺さり、ドクメンタは軽くあっさり流れるように感じるのですが、グリム童話は残酷な中にユーモアがあり重さと軽やかさの両面をもった不思議な世界です。相反する要素を備えた存在にはとても惹かれます。
博物館鑑賞後、ICEでデュッセルドルフへ向かいました。